Archive for 2017年7月

奈良美智「for better or worse」

奈良美智さんの「for better or worse」を豊田市美術館で観てきました。
 

 
奈良さんの今までの流れをすべて汲んだような、総決算的な展覧会だったように思えた。その昔横浜美術館で見た時の印象が強く、その後も展覧会ではないけども作品は単品で観てきたんだけれども、今回の展覧会はすごく静かな雰囲気だったように思えた。
 
それも、事前に村上隆さんの展覧会についての投稿を読んでしまったから、かもしれないし、そうでないかもしれない。または、ブッチャーズの吉村さんに向けたものがいくつかあったというころでそう思ったのかもしれない。とにかくPOPにキャッチーなという横浜で感じたそういう部分よりも奈良さんの今までの流れとそして現在とても静かだけども力強い作品になるまでの過程を見たような気がした。
 
豊田市は写真の撮影は禁止だけれども、奈良さんのインスタグラムに画像や動画が投稿されていたりするので、きになる方はインスタグラムをチェックするといいと思う。
 
あと、今回すごく思ったのはとにかく展示が上手い。作品点数がそれほど多くないとはいえ、大きな作品もたくさんあるし、すごいボリュームがあるんだけれども、展示が上手くて、物語を見るように行間でも楽しめるようなそういう展示ですごいなと思った。自分のバックボーンとなる部分の導入から、初期の無邪気でいたずらっぽさのある雰囲気から、いろいろなことを考えたり、いろいろなところで火がついたり、いろいろな共同作業をしたり、そこから少しづつ静かな大人になっていくような物語のような。最終的に肖像画のような作品ばかりになって目の力と少しの表情だけで多くのことを伝えるようになる今まで。とにかくいい展示でした。
 
現在の奈良さんまでの総決算的展覧会なので、必見だと思います。(とはいえ、実は総決算といいつつ、最近の奈良さんの陶芸とかの面は出てない気がするんだけど、それはそれで、物語が完成してたから、総決算的であることは間違いと思います。)
 

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遠藤利克展「聖性の考古学」

遠藤利克さんの「聖性の考古学」を埼玉県立近代美術館で観てきました。
 

 
とにかく作品が大きいと感じるサイズに作ってあり、それが所狭しと美術館の中に窮屈にと言っていいほど詰め込まれているので、圧倒感があります。そして、火や水や木という人間の中で原始的に近い部分を利用して作品を作っているので、それ自体の強度も作品がまとっていてより圧倒感を出していると思いました。
 

 
作品がもの派の物語を排除しものの関係性から作品を作ったことに対して、物語の復権ということを考えているようなので、それぞれの作品のモチーフや作りというものも、大きな意味での物語に属して想像できるようなものとなっているように感じました。とにかく大きさを含めて体感することでわかるという作品なので、見に行かなければ始まらないという感じの展覧会でした。
 


 

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大山エンリコイサム「Windowsill」

大山エンリコイサムさんの「Windowsill」をLUMINE0で観て来ました。
 

 
独特なクイックターンストラクチャーというモチーフを使っていて、いわゆるストリートのグラフティーの中にある構造だけを抜き取ってそれを絵画にしているような作品を作っていて、今回はタギングとかそういうものの中にある滑らかな線を取り出したような作品でした。
 

 
近くで見ると本当に道にある落書きのようなグラフティーのようなものと区別がつかないかもしれないくらいの線で重ねられている作品なんだけども、それが大きな一つの作品になるととても絵画的なものに見えて来きてアートとしてもグラフティーとしても語れるような立ち位置が面白いです。海外だとこういうストリート的なアートはグラフティーの展覧会とかもあるし、文化としてもある程度認められていそうだけども、日本だとやっている人もアートとして捉える人もまだ少ないのかな。という中で、注目の作家だと思います。
 

 


 

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美術手帖 2017年6月号
美術手帖 2017年6月号

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美術出版社 (2017-05-17)

 

笹井青依

笹井青依さんの個展をANDO GALLERYで観てきました。
 

 
木の絵画をずっと描いている方で、その木が普通ではなく何か記号時でもあるんだけど、季節を感じさせたり風を感じさせたり、その木の種類について感じさせたりと単純ながらに小さな物語があるかのような画面で、その静かな画面をずっと見てしまう感じです。
 

 
そこはかとなく、横山裕一さんを感じさせるような漫画のような省略の中に時間があるような面白い絵画です。ずっとこの感じなんだけど、とても面白いので色々見たくなる。美術館とかでまとめて大量にみたらもっと面白そう。
 


 

MEGURU YAMAGUCHI「SPLITTING HORIZON」

MEGURU YAMAGUCHIさんの「SPLITTING HORIZON」をで観て来ました。
 

 
スピード感のある筆のタッチのみが形となって作品となっていて、その筆の軌跡をみているとグラフティーやストリートの文脈も感じるんだけれども、それ以外にも絵画としての色や重なりが見えてそういう筆のタッチにも見えてきたり。
 

 
強度のある色や形で、それだけでも絵画で作品として成り立つ要素を十分に持っていて強烈にその強さをぶつけてくる感じでした。かっこいい。
 

TENGAone 個展「Fabrication」

TENGAoneさんの個展「Fabrication」をBLOCK HOUSEで観て来ました。
 

 
巨大なグラフティーからドローイングのようなものもあって、さらにはストリートのアートの領域に見えるようで現代アートに足を突っ込んだような、まるで段ボールに見える木に書かれたペインティングなど、いろいろ驚かされる仕組みで楽しませつつも、画力の高さを見せつけるような展示でおもしろかったです。
 

 
ぱっと見だとどう見ても段ボールで、じっくり見ると木の質感を残している感じとかが結構ツボでした。そしてストリートの感覚やグラフティーのクールな感じとか、遠くからみたり、携帯で写真を撮ろうとすると見えるKING OF POPの顔とか、POPに仕上がってて楽しいと感じる展示でした。