Archive for 2017年4月

多田圭佑「forge」

多田圭佑さんの「forge」をMAHO KUBOTA GALLERYで観てきました。
 

 
一見、木の上に書かれたペインティング的なものに見えるのですが、ステイトメントをじっくりと読んでみると、
 

しかしここで目の前に展示された「床板」が木材ではなく、<実はアクリル絵具とメディウムという純粋な絵画素材のみで出来上がっているペインティングだという事実>が伝えられたとしても、鑑賞者の多くは「本当に?」と問い返さずにはいられないことでしょう。

 
とされていて、実際そうなったんですが、ここまで本物と見分けがつかないと意味がないんじゃないかというレベルでしかし、確実にペンティングなのでしょう。
 

 

「捏造」されたスーパーリアルな視覚情報の上にアンフォルメルやアクションペインティング、あるいはグラフィティなどにつながる身体感覚を伴う絵画表現が展開される「trace/wood」のシリーズ。あるいは、古典的な手法で一旦完成させた静物画を凍結し、解凍ののちに再生させる「残欠の絵画」シリーズの手法など、多田圭佑の絵画では異なる幾つかの表現のレイヤーを重ね、対立させ、干渉させることによって、ノイズや時間の歪みを呼び起こす試みがみられます。

 
とあるように、確かに何かが対立しそこに生まれる違和感や、不思議な感じがすべてのものから感じられると思いました。そして、どのような手法でそれが作られたのかがわかったとたんに作品が強烈なインパクトと強度を持ち始めるように思えるのが面白かったです。

「水の三部作 2」アブラハム・クルズヴィエイガス展

「水の三部作 2」アブラハム・クルズヴィエイガス展をメゾンエルメスで観てきました。
 

 
正直なところよくわからなかったんですが、展示方法は綺麗でさすがエルメスでやるアーティストだなというところはありました。メゾンエルメスでやるアーティストはある程度クオリティーが担保されているというか、そんな気がします。
 

 
東京を表現しているというか、東京から得られたインスピレーションという形で作られているようですが、メタボリズムとかイサムノグチとか北斎とか今の東京ではないかなぁという感じもしつつ、まあメタボリズムと言われれば最初にみた新聞紙の構造体はメダボリズムっぽいといえばぽいが、きっと会期も後半になると蔦が絡まって緑になりそうな予感だけしました。このごちゃごちゃのいろいろなメディウムが混ざっているのが東京なのだろうか。
 

 
とにかく何がなにやらで三部作の真ん中だけしか見れないわけですが、ウーパールーパーとかはメキシコの文化なのかな?そのミクスチャー具合とか誰か紐解いて、この展覧会の見方を教えてください。苦笑
 


 

 

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Abraham Cruzvillegas Patricia Falguieres Veronica Gerber Bicecci Sergio Gonzalez Rodriguez
Walker Art Center
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高橋大輔 中村太一 今野健太

高橋大輔さん、中村太一さん、今野健太さんのGallery Show -After Fair-をアルマスギャラリーで観てきました。
 

 
2つのフェアに向けて制作された新作をふくむグループ展ということなんだけれども、なんとなくイメージで言うとフェアで売るんだから、その作家のいわゆる売れそうなど真ん中の作品を展示して売るのが一般的なのかなと思っていたのですが、この3作家さんたちは逆に安定したものではなく意欲的に新たな手法を出しているところが攻めの姿勢で良いなーって思いました。
 

 
スピード感のある水彩のイメージがあった中村太一さんが油彩で重みがありながらもスピード感があるままに書いている感じとか結構これから面白そうに感じたり、
 

 
高橋大輔さんとかは、あの絵の具を重ねて彫刻しているようなスタイルを圧縮したようなスタイルになって変わっていたり、
 

 
今野健太さんは、ブロンズとか大理石ではない石を使った作品を作っていたり、と新たな作品を全員が提示していたので、作家さんのステップがみれるという意味でなかなか面白いと思いました。個人的には中村太一さんの油彩が結構気になるなー。Radioheadのジャケットとかになりそうな雰囲気を持っている感じとか、なんとなくストリートのスピード感を感じさせるタッチとか。まあ、自分の好みの方向に変わるとか、変わって欲しいとかではないけど、これから楽しみな感じです。
 


 

「片山正通的百科全書」

片山正道さんのコレクション展「片山正通的百科全書」をオペラシティ アートギャラリーで観てきました。
 
所狭しと並べられたコレクションが大量で、今までオペラシティアートギャラリーで観た展覧会の中でもっとも壁が多く、細かい通路が多く、小部屋が多く作品点数が多かったのではないかなと思いました。
 

 
コレクション展なので、特に強いキュレーションがあるわけでもないので、羨ましいなーと観ていく感じなのですが、こういうコレクション展の中では一番好みがあうというか、有名な物好きというか。苦笑。村上隆さんのコレクションは別格でもはや美術館クラスだなと思ったのですが、これはコレクションという感じがしつつ、海外のものも交えて有名な作品がほとんどを占めているあたりが観やすくて良かったです。
 

 
特にこのAdrian Ghenieと五木田智央さんの部屋とかは、五木田さん好きもありますが、Adrian Ghenieを初めて実物でみたのでもっといろいろ観てみたいなと思わされました。(できればアクリルなしで。笑)
 

 
KAWSとは友達のようで、限定のTシャツとかSHOPで売っているほどでしたし、コレクションもたくさんありました。他にサイモンフジワラとライアンガンダーのコレクションもいっぱいありましたが、説明をできれば何かに詳しく書いておいてくれると嬉しかったり、サイモンフジワラさんのは特に映像がなくてあんまりわからないなーっていう感じだったりだったので、流し観的な感じになりましたが、たくさん持っていました。
 

 
意外だったのが、村上隆さんのまだスーパーフラット以前と思われる作品がいくつかあったりして、こういうのが観れたのは面白いなと思いました。(写真の青い作品がそう。よく見るとDate Paintingで日付が膨らんでいる。写真では全然わかりません)ほとんど海外作家というわけでもなくて、若手もちょこっとあったり、大竹伸朗さんとかもあったり、松江泰治さんがあったり、日本人作家も結構ありました。
 

 
とにかく、お金もちでオシャレなアートがいっぱいあります。みたいな感じで、自由に買っている感じがして羨ましいなーと思うと同時に、自分も何も考えないで買うとこれのショボい版になるだろうなー、もっとどういうコレクションにしたいか考えたりするのもいいかもなーなんて思ったりしました。
 

 


 

Kaws: Where the End Starts
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KAWS Catalogue at Yorkshire Sculpture Park
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Adrian Ghenie: Darwin's Room
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Adrian Ghenie
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今井俊介「float」

今井俊介さんの「float」をHAGIWARA PROJECTSで観てきました。
 

 
最近は布とかに印刷されていたり、KAATのロビーとかに巨大な動画を投影する作品をつくったりしていた印象のある今井俊介さんですが、今回は一転して元々の今井さんのスタイルに戻って作品を作っている印象で。コレコレと思わず思ってしまう感じでした。
 

 
この平面と立体が入り混じったような、空間の作り方のうまさというか、構図のうまさというか、色や形のバランスの良さというか、そういうものが観て取れて面白かったです。やっぱいいんだよなぁ。Spring Feverの小さい作品買いだったかなぁ。
 
ちなみにプレスリリースにはこんな感じに書いてありました。
 

今回の展覧会では、原点である平面作品に立ち戻り、新作のペインティングを発表します。 精密な筆使いにより画面の強度が高められた作品は、平面性をより強く感じながらも彩度や明度を意識した絶妙な色の選 択と構図のバランスや歪みによって、観ることの不確実性と新鮮なイリュージョンを鑑賞者にもたらします。

 

ジョージェ・オズボルト「For better or worse」

ジョージェ・オズボルトさんの「For better or worse」をTARO NASUで観てきました。
 

 
小人たちがよくわからないアートを観ながら、それをアートとしてみているような、複雑な構造をPOPにまとめてしまっているような展示でした。小人や動物たちが興味深げにペインティングを観ているんだけど、そのペインティングが難解な感じという。なかなか面白かったです。
 

 
奥の方には日本の根付に着想を得た彫刻作品とかがありましたが、やはり手前の小人たちの作品がインパクトがありすぎて印象が弱く感じてしまったけど、面白い展覧会でした。
 


 

Djordje Ozbolt
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Djordje Ozbolt: Questions of Faith
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「陶芸・彫刻を考えるきっかけ :信楽に撒かれた種」

「陶芸・彫刻を考えるきっかけ :信楽に撒かれた種」をKaikaiKikiGalleryで観てきました。
参加している作家は、奈良美智さん、大谷工作室さん、桑田卓郎さん、上田勇児さんでした。そもそもKaikaiKikiGalleryには結構行っているし、ここで陶芸作品を買ったこともあるし、陶芸の展覧会も観ているので、目新しさはないかなと思っていたのですが、ここで突然桑田卓郎さんが参加してきたのでびっくりしました。
 

 
もちろん、作品は陶芸とアートの間を行くようなものとして見えているし、村上さんが陶芸の問題を打破するために新たな地平を見つけるコンテクストを作り上げている展覧会ということもわかるのですが、桑田卓郎は入ってこないかなと思っていたので、桑田さんの湯呑みをつかっていたりするので嬉しい驚きでした。
 

 
しかもこの湯呑みとかにカラフルなものが、付着?している作品とか、見たことがなかったので、この進化の仕方は面白いなと思ったりしました。桑田さんの湯呑み追加で買いたいけど売ってないんだよな。苦笑
 

 
もちろん大谷工作室さんとか奈良美智さんの作品とかも絵画を立体化しているかのような素朴というか良い野暮ったさがある感じがドローイングのようで好きですし、上田勇児さんの作品などは緑が植えられている状態で完成しているといっていいと思うくらいでした。トークとかを聞くとより面白さもあるんだろうなと思いました。
 


 

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SPRING FEVER

SPRING FEVERを駒込倉庫で観てきました。
 

 
一人一作品で40名くらいの作家が参加しているイベント的な感じでした。実際アートフェア的な気分になりましたが、若手作家が多かったり、逆に若手のコレクターにも向けられていて買いやすい値段のものが多かったり、若手の批評家なんかにも向けられているような気もしました。
 

 
実際コンセプトとしては以下のようです。
 

桜さきみだれる4月、駒込倉庫にて若手作家約40名による展覧会を開催いたします。作家とコレクター、キュレーター、ギャラリスト、鑑賞者との交流と、彼らをサポートするための作品販売を目的とし、アートフェア的要素を含む小作品の展覧会です。

 
交流はよくわからなかったけど、イベントとかでるとそういう感じなのかな?あまり小作品だけっていう展覧会もないし、小作品だと買いやすい値段だったり、部屋に飾りやすい大きさだったりするからいいよなこういうのと思ったりしました。個人的には今津景さんとか今井俊介さんとか欲しかったなぁ。ちなみに加藤泉さんのは非売だったような気がした。
 


 

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宮島達男「LIFE (complex system)」

宮島達男さんの「LIFE (complex system)」をSCAI THE BATHHOUSEで観てきました。
 
まあ、いつも通りだなといえばいつも通りなのですが、池上さんと組んで作ったカウンターを今回も使ってさらに額に入れることで生命のカウントが何かの世界の中に収められている感じがありました。
 

 
ステイトメントにはこんな感じで書いてあります。
 

新作シリーズ《Life (Complex System)》(生命:複雑系)は、ステンレス製ケースのなかに配したIKEGAMI Modelのデジタル カウンター(ガジェット)とそれを結ぶ電子回路で構成され、あたかも人工生命が「孵化器」のなかで息づくように、LEDのまたたきに人工生命の静かな呼吸が託されています。生命の宇宙に接続したこれらのガジェットは、光の三原色によるさまざまな 個性の輝きとなって顕現し、やがて「0(ゼロ)」を刻む一瞬、闇に伏します。死を意味するこの暗闇もしばしの休息にすぎず、光はまた立ち上がりカウントをはじめる ー それは仏教における輪廻転生の教えでもあります。半永久的な反復を可能にするLEDテクノロジーは、複雑系の学説や宗教観のうちに結びつき、複雑な世界に開かれた生命の神秘を解き明かしながら、永遠につづく時間の流れを示唆しています。

 

 
また、香港の世界貿易センター(ICC)を流れ落ちる数字の作品も、小型化して作品になっていたのですが、個人的にはこれは巨大だからよかったと思っていて、小型化してしまうと実際のデジタルカウンターでない理由がよくわからないというか、電光掲示板でデジタルカウンターをわざわざ表示して落としているのがイマイチで、大きければいいのになと思ったりしました。やはりあれは大きくて完成していた気がします。
 
とはいえ、宮島さんの新作展なかなか面白かったです。
 


 

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