Archive for 2011年6月

ホンマタカシ「ニュー・ドキュメンタリー」

ホンマタカシさんの「ニュー・ドキュメンタリー」を東京オペラシティ アートギャラリーで見てきました。
 

 
ホンマタカシさんは、主に雑誌を主戦場としている写真家と思っていたのですが、金沢21世紀美術館でやってから東京のオペラシティアートギャラリーと巡回するという展示を今回はやっているので、アーティストなのかなぁ?なんて思いながら展示を観てきました。観てきた感想としてはアーティスト的なコンセプチュアルな部分も見えるけどやっぱり写真家といった方がいいのかなぁ?という印象でした。(そりゃ写真家なんだから当たり前かもしれませんが・・・。)
 
展示の構成としては、「Tokyo and My Daughter」「Widows」「re-construction」「M」「Together: Wildlife Corridors in Los Angeles」「Trails」「Short Hope (a portrait)」というパートに別れていてそれぞれの内容はWEBにも載っているし、会場でもらえるパンフレットにも載っているので割愛しますが、僕が思っている写真家のコンセプトよりは一歩踏み込んだ感じのコンセプトの物が多いという印象があります。(まあ、僕が写真はそんなに得意ではないので、説明されないと読み取れてないのかもしれないのですが。)そのコンセプトがまず大きくあるというところにアートとの関連性を見いだせるともいえて、そこが最初に書いたホンマタカシさんがアーティストに近いと感じる部分なのかも知れません。
 
写真自体は、全体的に空白部分を利用して空間を生かしたものであったり、時代を感じさせるという時間を生かした物だったりしているものが多いかもしれません。そんな中で「M」という某Mではじまるファーストフード店を撮った写真だけシルクスクリーンで加工されていてアメリカンな所を感じさせつつも、デザイン的にはスタイリッシュというちょっと雰囲気が違うものを展示していました。個人的にはそのスタイルもかなり好きですし、全体的にこういう写真は似ている物を撮っている人は結構居そうだけど、やはり独特のニュアンスがでるんだなとわかる写真が多かったような気がします。今後アーティスト的な部分が大きくなっていくのか?それとも、より写真家らしくなっていくのか?それとも両立してあらたな方向に向かうのかそのあたりが楽しみです。 
 
 

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「レントゲン 20周年特別企画 手練~巧術其の貳」展

「レントゲン 20周年特別企画 手練~巧術其の貳」展をspiralで観てきました。
 

 
レントゲンヴェルケの20周年の記念イベントなんですね。20周年っていうと気が遠くなるくらい古い話のように思えますね。今とアートの現状も違っていたはずです。そんな昔からやっているギャラリーのイベントということでかなり良い作品がそろっていました。通常のグループ展というと余り面白くないなぁと思っていたんですが、それはアーティスト側を観ようとしているからで、今回はギャラリー側を観ると考えるとギャラリー所属のアーティストの作品から見えて来る物もありました。
 
見ていると、耽美的や美しさ的なもののサイドと、幾何学的やデザイン的なもののサイドの2パターンにまとめられているように捉えられました。結構幾何学的なものやデザイン的なものの面の作品は好きな物が多いですね。そういう作品を出す人達をどんどん増やして発見してきてほしいなぁとか思いました。無料だし面白いからレントゲンヴェルケを知っている人は楽しめるのではないかなぁ?知らなくてもアートの入り口としても良いかもしれないですね。
 
 
 
 

村上隆「黒田清輝へのオマージュ」

村上隆「黒田清輝へのオマージュ」をKaikai Kiki Galleryで観てきました。
 

 
Kaikai Kiki Galleryで2日限りの展示だったせいなのか?かなりの人でした。ギャラリーでこんなに人がたくさんいるのは珍しいなぁ。そして、内容もスゴいよかったです。黒田清輝さんのオマージュの元になっている作品は、ちょうど先日建築が面白そうだったので入って、実物を観たところだったので個人的なタイミングも良くてビックリでした。
 
今回、展示されていたのはカイカイキキ工房により模写された黒田清輝の「智・感・情」と3人の絵師(Tony、KEI、大槍葦人)による3組の4種類の絵と、それの習作や行程表や連絡表等すべてが展示されていました。そして、どれも全てが素晴らしかったです。Kaikai KikiのWEBに以下の様に書かれていました。
 

「智・感・情」は、よく知られた明治時代の洋画家・黒田清輝の名作です。国内では裸体画として物議をかもしながらも、1900年に開催されたパリ万博では銀賞を受賞しました。日本人女性をモデルにした最初の油彩の裸婦作品ですが、当時としての理想的な体型を追求した「最先端の女性像」であり、日本の伝統的な金地の背景に、西洋絵画的な極めて写実的な描写で人体のみを配し、さらに明確な輪郭線を用いた絵作りは、そのモチーフとともに、非常に挑戦的なものでした。

 
そのテーマをまさに上手く利用した作品でした。現代に置ける「最先端の女性像」を3人の絵師に任せることで実現し、さらに漫画的な絵を利用するということは明確な輪郭線というものも上手く利用しているともいえるのでモチーフとして非常に利用しやすいものだったのかとも思えました。そして3人の絵師が作っている絵を比較しながら観ることができる最後の機会だったかもしれないと思うと観れて良かったです。3人とも比較しながらみると、それぞれの強みとかが観れて面白かったです。あまり大きなポイントではないだろうけど、どの絵師が好きとかいう好みも出てくるだろうなぁ。背景は金/プラチナ/金とプラチナで作られていて、当時とは違った解釈での日本画の金地の背景を上手く利用しているように思えます。
 
そして、そもそもの黒田清輝さんが裸婦画で物議を起こしたということと同様で、この3人の絵で現在の裸婦を表しつつも物議を起こすのではないか?ということも考えさせられるというのはかなり面白かったです。椹木野衣さんはTwitterで以下のようなことをつぶやいていました。
 

村上隆 @takashipom はこの「黒田清輝へのオマージュ。」で、近代における日本画と洋画の分裂をオタク文化を芯に再統合し、しかもそれをアートとして西欧近代に送り返すという「4種混合画」を、驚くほど高い次元で完成させている。

 
なるほど。確かに高次元で完成させられていてそれだけを観ても絵画として成り立っているのがスゴかったし、オタクの文化、ひいては今の日本文化の一部を上手く切り取って海外に紹介しているということにもなっていると思う。これはかなりスゴいことだと思います。とにかく短かったけど、観に行けて良かったです。
 
 

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加藤泉 「Paintings and Sculptures」

加藤泉 「Paintings and Sculptures」をナディッフアパートで観てきました。
 

 
加藤泉さんは細々と売れないアーティストの時代を10年以上も続けていた中、ある日突然ヨーロッパからのオファーが来て一気にトップアーティストに上り詰めた方だそうです。作品は独特の世界観のなかにある胎児のような子どものようなモチーフのペインティングや彫刻というものなんですが、その独特で強烈な世界観は確かにインパクトがあると思います。
 
今までの加藤さんの作品のイメージだと、木彫りの彫刻のような作品か、油絵のような絵画の作品のイメージだったのですが、今回はフィギュアでした。これは、作品集に作品をつけるためにそうしたのか、それ以外の意味があるのかは分かりませんが新たな一手として面白いなぁと感じました。フィギュアの出来という点だけでいえばイマイチ出来は良くなかった気がしますが、ここからどうなっていくのかという余白があってこれからが気になります。
 
 

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藤堂良門 「7000 Basalt」

藤堂良門 「7000 Basalt」を、アートフロントギャラリーで観てきました。
 

 
前にも何処かで観たような気がするんですが、どこだかわすれたなー。って思っていたんですが、調べてみると神奈川県民ホールギャラリーでやっていた「日常/場違い」のようですね。
 
今回は、石や本の間にものすごく純度の高そうなガラスが入れ込まれていて、そこに新たな空間が作り出されているような作品でした。そのほかにも、本を透けるような紙で重ねて表した物や、遠くから観ると単なる石なんだけども、近くで観ると本のような紙で重ねて一つの石のような物になっている作品などですね。ガラスの作品は、前も同じような作品でしたがそのときは柱とかにガラスを挟んだような大きな物もありましたね。

本などはそのタイトルだけに集中されることになり新たな意味がつけ加えられているような感じでした。石も本来年月を重ねてそのようになるものに、あらたな空間が加わる事で、意味や観た目も変わっている面白いものになっていると思います。とにかく歴史や時間などが染み付いた物の一部を透明にすることによってあらたに見えてくる何かを見せているという印象でした。そのほかの立体もそういう歴史や時間を封じ込めたり解放したりしているような印象だったのですが、ドローイングに関してはなんかまだテストというか、作品という感じではないのかな?ちょっとイメージが繋がらなかったです。
 
 

木村了子展「楽園」

木村了子展「楽園」をMIZUMA ACTIONで観てきました。
 

 
なにやら妄想を素晴らしく現実化させているという点でかなりスゴいところまでいってたような気がしました。それがまるで日本画のような雰囲気で大きくあるもんだからかなりのインパクトでした。一体なんの妄想なのかというと美男子の妄想ですね。
 
入ってすぐに巨大な屏風絵が2つあって、片方には筋トレしている美男子が、片方にはまるでジャニーズのような美男子同士がホモソーシャルくらいの勢いで楽しみながら生活しているみたいな絵でした。手法的に日本がなのかどうかなのかはイマイチ詳しくはわかりませんが、漫画、特にちょっとマッチョなタイプのBL漫画にありそうなタッチの絵を屏風に書いてあれほど大きくアピールしてくるともの凄い圧力がありますね。
 
そこに妄想の力というかジャニーズ的な美男子やら筋肉やらへの偏愛のような力を感じました。なんかゲイの人達とかもかなり喜びそうな感じだったなぁ。そこまでの力がみえてくるとかなり面白く感じることもできました。
 
 

五月女哲平「猫と土星」

五月女哲平さんの「猫と土星」を、青山|目黒で観てきました。
 

 
モチーフを平面に置き換えて、色と形のバランスで絵画の画面を構成しているような、平面絵画で絵画とイラストの間のような、絵画には収まらなくてもいいという自由度を感じました。おそらく、それは立体感を意図的に排除したような形や、色の配色のバランスから来ていて、実際にインテリアショップでみるような色合いのようにも感じでられるけども、ファンシーになりすぎないというバランス感があって、美術な文脈以外でも見る機会がありそうな気がしました。